開催前からGoogleにオススメされていた「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」に行ってきました!
展示開始すぐから様子を伺っていましたが、あまりの人気で混雑が続き、ついには日時指定券が導入されるほど。その中で無事行くことができたため、印象に残った箇所の感想を残そうと思います。
展示の概要
今回の展示は佐藤氏のクリエイティブワークを時系列で追っていくスタイル。恥ずかしながらこの方の名前は展示の情報を見るまで知りませんでしたが、知ってみると「レジェンドじゃん……」と愕然とします。
全体マップはこんな感じ。

所要時間は、映像を適度に飛ばして観ておよそ2時間半ほど。映像視聴が中心なので、SNSでは「じっくり観たら5時間かかる」と言う人もいるようです。
※ただし再入場不可。5時間いるのは猛者すぎる。
記憶に残っている数々のCM
展示前半の方では、佐藤氏が手がけた数々のCMを視聴し、解説を見ることができました。
宣伝会議のコピーライター養成講座を受けたこともある自分にとっては、CM制作は元々興味深い対象。しかも展示の中では、子どもの頃流れていて耳に残っているCMがいくつもありました。
映像よりもむしろ音
「音から作る」と題されたコーナー。
佐藤氏のCMでは音を重要な道具として用いているといい、その具体例2つが面白かったです。
- 効果音で視線誘導をすること
- CMソングをタイムキーパーにすること
①→ウェイターが持ってきたグラスを置くシーン、効果音が入った瞬間、視線が中央の男からそちらへむかう(視線トラッキングで検証)
②→映像がCMの尺に入るか事前調査するために、モルツ〜モルツ〜のCMソングで数えながらシミュレーション
(自分にとっては初耳の手法で面白〜い!と思いましたが、映像制作の人にとってあるあるの手法なのかは知りたいところ)
数々のCMを生み出すのと同時進行で、整理・体系化をしていた事に驚き

特に印象的だったのは、その技術を感覚ではなく、きちんと整理・体系化していたこと。だからこそ売り上げるCMを量産できたと思いますが、この時点でクリエイターというより研究者寄りな思考の持ち主だと感じました。
自分の成功パターンを分析して再現性を持たせ、さらなる成功につなげる……。そんなふうに仕事ができる人になってみたい。
【追記】
上記は展示を見た後の感想で、あとから図録を読んで再確認したところ、この方にとってはルール開発のほうが主だったことがわかりました。「作り方を作る」は最初からだったんですね。
劇場感のある体験が良かったDシアター(だんご三兄弟)
「だんご三兄弟」の生い立ちとその後の展開を紹介するDシアターというコーナー。映像を鑑賞する場所としては他のシアターコーナー同様ですが、ここだけ小物が演出の一部になっていました。
中央スクリーンに映像が流れていない間は、その外側に立てかけられた黒板にナレーション文字が投影されるのですが、小劇場のような雰囲気が出ていてなかなか良かったです。(「あっという間劇場」に寄せた演出?)
というか、だんご三兄弟が元は書籍から始まっていたとは知りませんでした。(コーナーに途中から入ったので分かりませんが、飾られていた本も演出に使われていたのかも?)
国民的ヒット曲の裏側を知るだけでも面白いのに、「その情報をどう見せるか(展示空間づくり)」の仕掛けに心をつかまれました。展示に足を運んで良かったなぁと思えるので、こういう体験デザインは大事だと思います。
ピタゴラ装置の感心が共有できる貴重な体験
本物のピタゴラ装置の展示が見られるコーナーでは、本物の装置の大きさを体感。実際には装置は動かせず、装置の背後の大スクリーンに順番に映像が流されます。
面白いのが、それを見ているその場の人々が同じタイミングで「おお…!」と感嘆の声をあげること! ピタゴラ装置の鑑賞でオーディエンスの一体感を感じるという、なんとも貴重な体験でした。
また、この装置に使われている部品の多くが佐藤氏の私物だということもここで知りました。
知的な面白さを再構成、魅力的すぎる研究室
佐藤氏の研究室でのテーマを扱ったエリアに進むと、大学時代に戻ってここに入りたいと思うくらい自分の興味関心にヒットする分野でした。
『アルゴリズムこうしん』が研究から生まれたことに驚いたのと、その原点ともいえる初回講義がすでに面白かったです。まさに面白い教授のオリエンテーションという感じ。

もう一つ好きだったのが、「工場の面白さ」はどこから来ているのか? という研究テーマ。数々の工場見学から“パターン”を抽出し、単純なアニメーションに再構成した制作も大変よかったです。
余分シアターで歓喜! 『ビーだま・ビーすけ 黒玉王子の大冒険』
ラストの「余分シアター」では色々な作品が流れますが、この中で個人的に大好きな作品『ビーだま・ビーすけの大冒険』が見られました!
年始に偶然見て(どうやらあれが初出だったらしい)、涙が堪えきれなかったあの名作。もう一度見られると思ってなかったので心躍りました。ピタゴラ装置の設計がストーリーと完璧に一致しているのが凄すぎる作品です。
この大作が一体どれくらいの規模の装置なのか、これの展示があったら超最高だったな〜〜。
まとめ
全体を通してタイトル「新しい×(作り方+分かり方)」に偽りなく、期待以上に持ち帰るものが多い内容でした。
まだ途中までしか読めていませんが図録も購入したので、より詳細を把握していきたいです。
〜余談〜
(本当に個人的な感想です)展示の後半を見るにつれ、自分がこの大学に行ってこの研究室に入れたらどんな風だったろうなぁと想像してしまい(可能性として全く無くはなかった)、「こういう学びをしてみたかった」という小さな憂鬱が生まれました。
なんなら展示で満たされた知的好奇心よりも憂鬱のほうが少し大きめという……。そんな複雑な感情が余韻として残る、これまでにはない展覧会となりました。
チラシで置いてあったオンライン講義、日常に時間を確保できたら受けたいなぁ。。
